オレは今、スキャンダルと陰謀と下剋上に穢れた自分のレッテルを払拭している最中だ。

Ｎのほか、腹心のＴが内勤になり、Ｋが懐柔し、今年になって支社長らも乗っかってきた。

今、オレの目の前に京子がいたら
「松本くんは、ブルーカラー社会でも、やっぱりサプライズをやってくれた」
「必ず、その会社や組織のパイオニア(先駆け･先駆者)になるから、一緒にいると刺激があってワクワクする」
と、対抗心や嫉妬心など抱かずに、素直に喜んでくれただろう。
しかも、スキャンダルと裏切りにまみれた女性育成の先駆けよりも、会社の顧客戦略の先駆的役割の最前線にいる方が断然レベルが高くて、京子も納得するだろう。

バイトや犯罪紛いな生き方しかして来なかった意識の低い大人が集う警備業界。

彼らには、まずは、仕事をやる気にさせるところからスタートしなければならない。
みんな、オレから要職を提供して貰い、この時点で、「自分はエキスパート」と自惚れてしまう。
挙げ句は、思い上がって出て行ってしまい、外に出て「自力では通用しない」と気づくのだ。

本間のような現役バリバリの企業戦士が来たことで、オレはこれまで培ってきた自身のハイレベルな能力を、警備員の世界でも活かすことができるようになった。
オレが本間を囲わないから、内勤も戦略が組みやすいのではないか？

これまで関わってきた隊員は、みんな、オレの”水準”が難し過ぎて理解できなかった。
彼らが着いて来れないのだから、こちらが相手の目線まで降りて行き、向き合うしかない。
これまでは、ここまでのところで終わっていたのだ。