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【番号利用法第19条第14号】16-2. 人の生命、身体又は財産の保護のための提供(労災保険の手続に関する行政機関間の見解の不一致)【マイナンバー制度 第5章提供・収集・保管 第2節提供制限】 2015/12/03

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個人情報保護規程(マイナンバー法・ストレスチェック網羅版)
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労災保険の年金請求や、市町村における障害者等による給付の申請について、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」は適用対象であるか否かを確認しているところである。

 

本年8月下旬、『図解とQ&Aですっきりわかるマイナンバーのしくみ』執筆中、本件について取り上げるため、法律を所管する内閣府に確認したところ、「適用対象である」とする回答を得た。

しかし、平成27年10月14日厚生労働省発表「マイナンバー制度(労災保険関係)」の「よくある質問(Q&A)」のQ6を確認したところ、次のように回答されていた。

 

※平成27年11月10日厚生労働省発表

よくある質問(Q&A)

個人番号を利用する労災保険手続については、事業主は番号法上の個人番号関係事務実施者とはならず、他制度の事務とは異なり、従業員などから個人番号を取得することはできません。

○ このため事業主は番号法上、

①個人番号の提供を求めてはならず、

②特定個人情報(個人番号を含む請求書の内容)を収集、保管することはできません。

 

これに従い、本日(12月3日)、内閣府へ再度、解釈の確認をとると、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」は労災請求の適用対象であり、「給付を受けれなければ、生命、身体又は財産を保護できない」ので、被災労働者は、本条を根拠に、労災年金の請求手続書類(特定個人情報)を事業者や社労士に提供することは可能であり、事業者や社労士は取得し保管することができるとするものだった。

 

今度は返す刀で、厚生労働省へ上記内閣府の回答をぶつけてみた。
すると、厚労省より次の回答を得た。
「法令を所管するのはあくまでも内閣府ですから、内閣府が本条を根拠に、労災手続を代行することができるというのであれば、できるのでしょう。ただし、本条の解釈について、厚労省は内閣府大臣官房番号制度担当室『逐条解説』に基づき、「生命に緊急危機迫るようなニュアンスで受け止めているので、労災やその他の給付請求に本条は該当しないのでは?と考えている。また、委員会のガイドラインの見解のように「客が小売店で個人番号カードを落としていった場合、その小売店は警察に遺失物として当該個人番号カードを届け出ることができる。」といった、あくまでも有事の事態を想定した条文であると考えている」
したがって厚労省では、労災請求に関し、事業者や社労士は代理人として手続を行うよう指導する方向で調整中とのことだ。

 

 

「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」

この条文のみ読んだら、危機迫る緊急的場面ばかりでなく、読み書きができない、動けない人の生命、身体、財産の保護も適用対象と解釈した人を「間違った解釈している」とはいえません(厚労省のジャッジが「正」ならば、条文が不親切と思う)。

兎に角、行政機関間において、解釈見解を明確にしていただきたい。

 

内閣府大臣官房番号制度担当室『逐条解説』

事故で意識不明の状態にある者に対する緊急の治療を行うに当たり、個人番号でその者を特定する場合など、緊急事態における特定個人情報の提供を認めるものである。

 

「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき」の規定が使われている番号利用法条項は次の通り。

第9条第5項(利用範囲)

第19条第14号(提供制限)

第20条(取得又は保管制限)

第29条(特定個人情報ファイルの作成制限)

第30条第3項読替保護法第16条第2号(利用制限)