【番号利用法第39条乃至第42条】14. 社会保険料適用逃れ企業に対し、国税庁と厚生労働省が法人番号を活用して連携した場合の摘発負担額のシミュレーション【マイナンバー制度 第2章定義 第2節法人番号】 2015/05/24
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社会保険料適用逃れ企業に対し、国税庁と厚生労働省が法人番号を活用して連携した場合の摘発負担額のシミュレーション
東京に本社を設置する事業者が、法人1社、自営1社を経営している。このうち自営に関し、社会保険加入対象者が20人いるにもかかわらず、社会保険未適用であった。
事業者及び法人に勤務する10人はいずれも40歳以上の介護保険第2号被保険者であり、毎年賞与が2回支払われているのに対し、自営の従業員には賞与は支払われておらず、いずれも40歳未満であり介護保険第2号被保険者ではない。
1人当たりに毎月支払われる給与額(賞与は1回分の額)
給与状況 | 法人給与月額 | 法人賞与1回 | 自営給与月額 | 自営賞与1回 |
事業者 | 1,000,000 | 2,500,000 | 500,000 | 1,250,000 |
従業員 | 300,000 | 750,000 | 150,000 | 0 |
以上の条件に基づきシミュレーションした。
保険料率(東京都)
区分 | 健保 | 介護保険 | 厚年 |
事業者 | 4.985 | 0.79 | 8.737 |
従業員 | 4.985 | 0.79 | 8.737 |
合計 | 9.97 | 1.58 | 17.474 |
※介護保険第2号被保険者は40歳以上65歳未満の人 |
月給に係る毎月の社会保険料(事業者と従業員の負担額を折半する前の合計金額)
法人 | 人員 | 標準報酬 | 健保 | 介保 | 厚年 | 全社合計 |
事業者 | 1 | 980,000 | 97,706 | 15,484 | 108,338 | 221,528 |
従業員 | 10 | 150,000 | 29,910 | 4,740 | 52,422 | 870,720 |
合計 | 127,616 | 20,224 | 160,760 | 1,092,248 |
自営 | 人員 | 標準報酬 | 健保 | 介保 | 厚年 | 全社合計 |
事業者 | 1 | 500,000 | 22,931 | 3,634 | 0 | 26,565 |
従業員 | 20 | 150,000 | 14,954 | 0 | 52,422 | 87,072 |
合計 | 37,885 | 3,634 | 26,210 | 849,845 |
※ 1人当たりの標準報酬には上限額が定められており、事業者の場合、2社の合計金額に基づき上限額を算定し計算しているため、自営における社会保険料が小額になっている。
厚生年金保険:月額620,000円(2社合算)
健康保険:月額1,210,000円(2社合算)
賞与に係る1回の社会保険料(事業者と従業員の負担額を折半する前の合計金額)
法人 | 人員 | 標準賞与 | 健保 | 介保 | 厚年 | 全社合計 |
事業者 | 1 | 2,500,000 | 249,250 | 39,500 | 262,110 | 550,860 |
従業員 | 10 | 750,000 | 74,775 | 11,850 | 131,055 | 2,176,800 |
合計 | 324,025 | 51,350 | 393,165 | 2,727,660 |
自営 | 人員 | 標準賞与 | 健保 | 介保 | 厚年 | 全社合計 |
事業者 | 1 | 500,000 | 39,880 | 6,320 | 0 | 46,200 |
従業員 | 20 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 39,880 | 6,320 | 0 | 46,200 |
※ 標準賞与についても上限が定められているため、事業者の場合、2社の合計金額に基づき上限額を算出し社会保険料を計算。
厚生年金保険:1回の支払が1,500,000円(2社合算)まで
健康保険:年間5,400,000円(2社合算)まで
適用を免れている金額
報酬月額 | 賞与額 | 合計 | |
年間 | 10,198,140 | 92,400 | 10,290,540 |
時効2年の金額 | 20,396,280 | 184,800 | 20,581,080 |
シミュレーションの結果、国に納付すべき金額合計は、20,581,080円である。これまで不正に適用を逃れてきた事業者が社会保険倒産に追い込まれる可能性は十分考えられる。
国の調査によると、所得税を払っている事業所が246万社あるのに対し、日本年金機構が厚生年金保険料を徴収しているのは180万社にとどまり、66万社が適用を逃れていると試算している。
社会保険料の徴収時効は2年間である。厚生労働大臣や保険者には、保険料等の徴収金を滞納する者に対して、期限を指定して督促状を発することが義務付けられている。納期限を守らなかった場合は、保険料額に、納期限の翌日から保険料完納又は財産差押の日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6%(当該納期限の翌日から3月を経過する日までの期間については、年7.3パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金が上乗せされることになる。
マイナンバー制度の一番の目的は「公平な社会」であり、我が国は法治国家である。法に基づき不正企業を摘発されても止むをえない。