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【個人情報保護法第2条第4項】同和問題~個人情報データベース等【2/2要配慮個人情報に関連して住宅地図帳が規制対象外とされていることへの懸念】 2015/04/04

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利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるもの【保護法令第2条、保護法ガイドライン】

平成27年法律第65号により、保護法第2条第5項に定める個人情報取扱事業者の定義変更(同項第5号「その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者」の規定削除)に伴い、カッコ書の一文「利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるものを除く。」が個人情報データベース等の定義に追加された。

 

なお、「利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるもの」について、保護法ガイドラインでは、保護法令第2条の規定と合わせて、その詳細が次のように解説されている(一部説明を補足)。

 

※ 電話帳、カーナビゲーションシステム等の取扱いについて個人情報データベース等が、以下の要件のすべてに該当する場合であっても、その個人情報データベース等を構成する個人情報については、保護法第2条第6項に定める個人データとなる可能性も否定できない。しかしながら、その利用方法からみて個人の権利利益を侵害するおそれが少ないことから、個人情報取扱事業者は、保護法第4章「個人情報取扱事業者の義務等」(保護法第15条乃至第58条)の規定を課されないものと解釈する。

① 個人情報データベース等の全部又は一部が他人の作成によるものである。

② その個人情報データベース等を構成する個人情報として氏名、住所(居所を含み、地図上又はコンピュータの映像面上において住所又は居所の所在場所を示す表示を含む。)又は電話番号のみを含んでいる。

③ その個人情報データベース等を事業の用に供するに当たり、新たに個人情報を加え、識別される特定の個人を増やしたり、他の個人情報を付加したりして、個人情報データベース等そのものを変更するようなことをしていない。

 

そこで、個人情報データベース等の定義における住宅地図帳の位置づけについて、問題を提起したい。

住宅地図帳は、第3項「要配慮個人情報」の条文中「本人の社会的身分」(本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの)を知ることを可能にする。

郷土史や神社史などに関心を持つ人であれば、既知のことであるが、江戸時代の文献、郷土史、団体史などから団体の先祖から古く信仰されていた神社(特定の名称の神社である)の所在地を推定し、住宅地図帳(神社が現存しない又は改称した場合には、小字名や、明治期から昭和初期の古地図)を用いる方法により所在地を特定し、住宅地図帳に記載された姓や、現地に造営されている鎮守の願主や奉納者を目視することにより、特定の姓の持ち主の「社会的身分」を詳らかにすることが可能となる。

保護法ガイドラインにおいて、住宅地図帳は「利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないもの」として個人情報データベース等の定義から除外されているが、例えば、個人情報取扱事業者が「当該地区の出身者又は在住者であって対象とされる姓を名乗る学生等を就職活動のときに採用しない」ことを目的として、住宅地図帳を事業の用に供する可能性があり得ることを加味した場合(地名総監問題)、果たして「利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないもの」として取り扱ってよいものなのだろうか。甚だ疑問である。

住宅地図帳から、全部又は一部のコピーやメモ等をとらなければ、保護法第15条(利用目的の特定)、第17条第1項(適正取得)、第18条第1項(利用目的の通知又は公表)の適用を受けない。要するに、本のまま所有し目視し又は記憶している場合においては、本条の定義から除外され、第16条第1項(利用目的の制限)、第17条第2項(要配慮個人情報の取得制限)の適用も受けないことになる。なお、団体史において本人が姓を公開している場合や神社の願主・奉納者として本人が姓を公開している場合には、第17条第2項第5号に基づき要配慮個人情報の取得制限の適用を受けない。