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【番号利用法第5条】5. 地方公共団体の責務~社会保障問題からみた政府のIT政策(ワークライフバランス推進・マイナンバー法施行・地方創生本部設置)【マイナンバー制度 第1章総則】 2014/10/29

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地方公共団体の責務

(地方公共団体の責務)

番号利用法第5条

地方公共団体は、基本理念にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用に関し、国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を実施するものとする。

 

保護法第5条では、地方公共団体の責務として、「その地方公共団体の区域の特性に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する」ことが定められているが、番号利用法第5条においては、個人番号及び法人番号の利用に関し、基本理念に則すため、地方公共団体の責務に「国との連携」「自主的かつ主体的に」という条件をつけ、一歩踏み込んだ形で、その地域の特性に応じた施策を実施すべきことを規定している。

現在の日本の社会問題として、少子高齢化の進行、女性の社会進出等による晩婚化と男性の生涯未婚率の上昇、家族介護を要する現役世代の増加傾向、晩婚化による親子の年齢格差からみる将来の家族介護を要する労働者の若年化傾向、子1人世帯の増加からみる将来の「夫婦で4人介護の時代」の到来、正社員比率の減少、介護職員過不足問題等、将来に向かって、わが国の労働力人口の減少はますます進行すると同時に、国の医療・介護・年金等の社会保障費負担は増加の一途を辿ります。

近年、社会保障費を負担する労働者の雇用継続や、就労支援を促進する目的で、ワークライフバランスやダイバーシティ、テレワークなど、多様な働き方が国を挙げて提唱されておりますが、労働者の雇用継続のみならず、BCP対策や、コスト削減の観点から、大手を中心とした企業も、これらの労務改革に着手し始めています。政府の方針や、将来の社会情勢を踏まえれば、このトレンドは、今後、一層加速して行くものと思われます。

消費税率10%引き上げと、高所得者の健康保険料の引き上げ、厚生年金保険への加入ハードルが下げられることが予定される昨今、政府は、平成25年6月「世界最先端IT国家創造宣言」(平成26年6月改定)において、東京オリンピックイヤーである平成32年までに「雇用型在宅型テレワーカー数10%以上」、「テレワーク導入企業数3倍(平成24年度比)」と、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の目標値を具体的に示すことで、社会保障費を負担する労働者の雇用継続や、就労支援対策に真剣に取り組む姿勢を打ち出しました。

厚生労働省では、これより早く、平成22年度より、社会保障費負担者の減少に歯止めを効かせるため、ブラック企業対策と、新卒者・既卒者の正社員継続を支援する一環で、ハローワークにおいて、新規学卒者の3年以内の離職率の調査を実施しています。

さらに、平成27年4月以後、厚生労働省が国税庁のデータをもとに、年金事務所を通じて、社会保険未加入企業への立ち入り検査を実施する予定である一方、政府は、社会保障と税の公平な負担と給付を求めるため、番号利用法施行により、企業の社会保険の適用逃れや、税金逃れの取締りを一層強化する方針です。

このように、不足してゆく社会保障費の減少を抑止する政策が講じられる一方で、経済が成長しなければ、社会保障費を負担する労働者の雇用機会は拡大しません。

そこで政府は、先にもあげた「世界最先端IT国家創造宣言」において、番号利用法施行3年後の民間利用への拡大を視野に入れ、政府の所有するあらゆる公共データを公開し(オープンデータ)、民間の所有するビッグデータと連動した新たなビジネスの創出に力を入れる方針を打ち出しています。

さらに、政府は平成26年9月「地方創生本部」を設置し、まち・ひと・しごと創生本部事務局では、魅力あふれる地方を創生するため、「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」、「東京一極集中の歯止め」、「地域の特性に即した地域課題の解決」の3つの視点を方針として掲げています。

「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」、「東京一極集中の歯止め」につきましては、現在、政府、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省が積極的に推進を提唱している「テレワーク」との関連性があげられます。事業者において、在宅勤務を制度化することによって、事業所の所在地に左右されず、遠隔地での雇用が可能となり、働き手にとっては、転勤を伴う人事異動が必要なくなることで、単身赴任によって家族と疎遠になることも解消されます。従業員は、仕事と家庭生活を両立し、地域には、人材が残り、又は新たな雇用機会が創出され、地域の活性化がはかられる一方、東京への一極集中を防ぐことも可能となります。このことは、同時に、BCP対策にも繋がります。東日本大震災において、BCP対策が未整備であった企業は、取引先からの信用を失い、今もなお、元の取引先から発注を控えられてしまっています。このことからも、緊急災害時等における事業の一日も早い復帰は、企業の経営戦略のひとつとして捉えられ、BCPはもはや整備すべきかどうかの問題ではなく、企業の経営戦略としてどこまでどうやるのかの問題として取り組まれるようになっています。

視点の3番目「地域の特性に即した地域課題の解決」について、法第5条「地方公共団体の責務」においても、「国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を実施するものとする。」と定められており、地方創生本部の3番目の方針と、同条の規定が紐づけされています。住基カードの利用については、独自で条例を制定し、住基カードのメモリの空き容量を利用して、印鑑証明書などの自動交付機能を付加した地方公共団体もありました(番号利用法において、市町村長が個人番号カードを交付することを規定することに伴い、住民基本台帳法上の住民基本台帳カードに関する規定は削除されます)。同条では、地方公共団体に対し国と同様の責務が定められており、国が地方公共団体に一定の裁量を認めることで、地域の特性に応じた施策であれば、個人番号の利用範囲を拡大することが可能であると定められていることからもわかるよう、将来は、地方公共団体単位でのIT技術を活用した新たな仕事の創出が期待されるものと思われます。

17地方公共団体における番号の活用可能性(平成25年7月26日総務省自治行政局住民制度課 野村知宏)

18地方公共団体における個人番号の独自利用、情報の照会・提供(平成25年7月26日総務省自治行政局住民制度課 野村知宏)

出典:平成25年7月26日総務省自治行政局住民制度課

 

「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」、「東京一極集中の歯止め」につきましては、現在、政府、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省が積極的に推進を提唱している「テレワーク」との関連性があげられます。企業において、在宅勤務を制度化することによって、事業所の所在地に左右されず、遠隔地での雇用が可能となり、働き手にとっては、転勤を伴う人事異動が必要なくなることで、単身赴任によって家族と疎遠になることも解消されます。社員は、仕事と家庭生活を両立し、地域には、人材が残り、又は新たな雇用機会が創出され、地域の活性化がはかられる一方、東京への一極集中を防ぐことも可能となります。このことは、企業にとっては、同時に、BCP対策(事業継続)にも繋がります。東日本大震災において、BCP対策が未整備であった企業は、取引先からの信用を失い、今もなお、元の取引先から発注を控えられてしまっています。このことからも、緊急災害時等における事業の一日も早い復帰は、企業の経営戦略のひとつとして捉えられ、BCPはもはや整備すべきかどうかの問題ではなく、企業の経営戦略としてどこまでどうやるのかの問題として取り組まれるようになっています。

最後に、働き手の意識変化として、平成26年度新入社員「働くことの意識」調査結果(平成26年6月26日公益財団法人日本生産性本部)では、「人並みで十分」が5割を超え(52.5%) 「人並み以上に働きたい」(40.1%)は、将来4割を切る可能性が出てきています。また、既婚妻の意識調査では、86%が働きたいと考えていることが、内閣府「都市と地方における子育て環境に関する調査報告書」(2011年)において判明しております。

柔軟な働き方が好まれる一方、新型貧困7つの大罪として、「非正規雇用増加」、「転職転落」、「ブラック企業化」、「うつ発症」、「介護地獄」、「家計破綻」、「未婚化」がジャーナリストからも指摘されています。国家の打ち出す方向性が正しい判断であるか否か、国民の考える「豊かさ」の価値判断が、財力にあるのか、家族とのコミュニケーションにあるのか、しっかり見極めながら、適切な措置を講じてほしいと思います。

 

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