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【番号利用法第9条第2項】4. 地方公共団体の長その他の執行機関が条例で定める事務に個人番号を利用する場合【マイナンバー制度 第4章利用制限】 2014/12/27

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個人番号利用事務(地方公共団体の長その他の執行機関が条例で定める事務

番号利用法第9条第2項

地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法第1条第1項第4号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

 

地方公共団体は個人番号の利用に関し、別表第1に掲げられていない事務であっても、第9条第2項に基づき「社会保障、地方税、防災に関する事務その他これらに類する事務」のうち、第19条第15号の規定に基づき定めることとされる個人情報保護委員会規則に定める要件を満たすものについて個人番号を利用することを条例で定めれば、条例事務として個人番号を利用することができるとされている。

例えば、別表第1に掲げられていない乳幼児医療手当給付事務について、本条に基づき、当該事務において個人番号を利用する旨の条例を制定すれば、当該手当の申請書に記載された当該申請者の個人番号を利用して、データベースから当該申請者の必要なデータを検索し、管理することが可能となる(第19条第15号の規定に基づき定めることとされる個人情報保護委員会規則に定める要件を満たさないものについては、条例事務とは言わない)。

一方、番号利用法施行により、一般法に特例が定められるため、法律と条例の矛盾の是正、住民等に対する分かりやすさ、又は職員等に対する特定個人情報の取扱いに関する周知徹底等のための条例改正の要否及び改正する場合の内容について検討することが必要とされている。現在、都道府県及び市区町村は、地域の総合的な行政主体として社会保障、地方税又は防災に関する複数の事務を同一の機関で処理しており、個人情報保護条例の規定の下、複数の事務間において、相互に個人情報の授受がなされている。これと同様に、特定個人情報についても、別表第1に掲げられている事務を処理するために必要な場合に複数の事務間で特定個人情報を移転(個人番号の目的外利用行為に該当する)し、その検索、管理を行うために個人番号を利用する場合が想定される。このような場合には、同一機関内であっても複数事務間で特定個人情報の移転を行うこととなるため、本条に基づく条例を定める必要がある。

なお、地方公共団体の指定管理者制度における指定管理者は、本条中「当該事務の全部又は一部の委託を受けた者」に該当する。

 

【FAQ

第9条第1項及び第2項に基づき個人番号を「利用」できるのは、別表第1に規定する主体が同表に規定する事務で利用する場合と地方公共団体が条例で定める事務で利用する場合に限定されています。別表第1に規定する事務における個人番号の利用とは、別表第1の各項に規定される個々の事務で個人番号を利用することであり、当該利用により得られた特定個人情報を同一機関内で別表第1に規定される他の個人番号利用事務や、第9条第2項に基づき条例で定めた独自利用事務の処理に利用することは、第9条第1項に規定する利用範囲を超えるものです。このため、同一機関内の複数の事務で特定個人情報を利用する場合は、第9条第2項に基づく条例を定める必要があります。
他の地方公共団体に特定個人情報を提供する場合は、特定個人情報の「提供」として、第19条第7号や別表第2を根拠に行うことができるので、新たに条例を制定する必要がありません。これに対して、同一機関内の他の事務に特定個人情報を提供する場合は、特定個人情報の「提供」ではなく「利用」に該当し、第9条第1項の制限を受けるため、第9条第2項に基づき条例を制定する必要があります。例えば、「A市税務関係事務からA市福祉関係事務」のように、同一機関内の他の事務に特定個人情報を提供することは、特定個人情報の「利用」に該当します。勿論、同一機関内の他の部署に個人情報を渡す場合に、個人番号を使わず、宛名番号などを使う場合であっても、情報を受け取った部署で当該個人情報が個人番号と紐づくのであれば、渡した情報が個人番号と紐づけて利用されることになるため、個人番号の「利用」に該当し、第9条第2項に基づき条例の制定が必要になります。

なお、「A市税務課からA市教育委員会」のように同一地方公共団体内の他の機関に特定個人情報を提供することは、特定個人情報の「提供」に該当し、第19条第10号に基づく条例の制定が必要となります。

第9条第2項に基づく条例を定め、同一機関内の他の部署から特定個人情報を取得できる場合であって、情報提供ネットワークシステムを利用して他の地方公共団体などから同じ情報を取得できる場合であっても、第1条の規定による目的や第3条の規定による基本理念に照らし、情報提供ネットワークシステムを利用することが原則です。第9条第2項に基づく機関内利用の条例を定める場合も、情報提供ネットワークシステムを利用できる場合は、同一機関内の他の部署からの情報取得は適当ではありません。
条例で都道府県から市町村に委託された事務が、別表第1で都道府県が個人番号を利用できる事務として定められている場合や、第9条第2項の規定により都道府県の条例において個人番号の利用が定められている場合には、あらためて市町村で条例を定める必要はありません。
個人番号利用事務のために、当該市町村の住民基本台帳から個人番号を取得して利用する場合には、第9条第2項に基づく条例を定める必要ありません。これは、住民基本台帳法が住民に関する事務の処理の基礎とされており、特段の法令や条例の規定がなくても、住民基本台帳を備える市町村の執行機関が、当該市町村の住民の住民票に係る情報(個人番号を含む本人確認情報もその一部)をその事務処理に利用できるのは当然と解されていることから、個人番号利用事務の処理においても、住民基本台帳法に基づき、住民基本台帳から個人番号を取得して利用することができると考えられるためです。
第9条第2項に基づき条例で独自利用できることとした事務について、他の地方公共団体などと情報連携するためには、第19条第15号に基づき、個人情報保護委員会規則で定める必要があります。
法令や条例の根拠なく、事実上事務の一部を他の地方公共団体や民間事業者に委託している場合、事実上行わせているだけでは、個人番号利用事務実施者や個人番号関係事務実施者には該当しないので、個人番号を利用することはできません。事務を行わせる相手や事務の内容に応じて、条例で定め、又は委託契約を結ぶ必要があります。
地方公共団体が独自に実施している事務で個人番号を利用しようとする場合、その事務が第9条第2項の「社会保障、地方税又は防災に関する事務その他これらに類する事務」に該当するかの判断基準については、所管している地方公共団体自らが事務の趣旨や目的を勘案して独自に判断する必要がある。
地方公共団体が、国民健康保険の保険料や公営住宅の家賃を独自に減免している場合、当該保険料や家賃の減免が、国民健康保険法や公営住宅法に基づくものであれば、減免される保険料や家賃の計算に特定個人情報を利用するために第9条第2項に基づく条例の制定は不要です。法令に減免の根拠規定(条例への委任を含む。)がなく、独自に行っているものであれば、第9条第2項に基づく条例が必要です。
別表第1に掲げる事務と別表第1にない事務について、申請書を複写式で1つにしている場合、申請書や事務処理のシステムを区分することが現実的に難しいのであれば、別表第1にない事務について条例を定めた方が適当と考えられる。