ブログ

カテゴリ

アーカイブ

【労働基準法第32条の3】テレワークとフレックスタイム制について【ワークライフバランス】 2014/10/22

テレワークと併用できる労働基準法上の制度として、一昨日「専門業務型裁量労働制」、昨日「事業場外労働のみなし労働時間制」について、法律と留意点について述べてきましたが、本日は、フレックスタイム制について触れてみることとします。

日本労働研究機構の調査によれば、育児期(末子未就学)の女性労働者が、できれば利用したい両立支援勤務措置として挙げているのは「1日あたりの勤務時間短縮」よりも「在宅勤務」や「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ」や「フレックスタイム勤務」といった勤務場所や勤務時間帯を弾力化させる制度が上位となっています。

フレックスタイム制を利用することで、通勤時間帯を子供の学童保育への送迎に当てることも可能になりますし、夫の会社もフレックスタイム制を導入している場合には、夫の働き方と組み合わせて、制度をうまく運用することも可能であり、場合によっては、在宅勤務が減るケースなども考えられます。

フレックスタイム制において、コアタイムやフレキシブルタイムの設定は任意です。ただし、全員出席を要する会議等がある場合には、コアタイムを設定しなければ全員出席が不可能となります。また「いつ出社するかわからないから業務効率が下がる」との声をしばしば耳にしますが、フレックスタイム制を採用している事業場であっても、使用者は各労働者の各日の労働時間を把握しておく必要があります。このような場合においては、コアタイムを設けることが一考と思われます。

最後に、フレックスタイム制は、始業と終業の時刻を労働者の裁量に委ねることが条件になります(使用者が具体的な指示をすることはできません)。時間管理が複雑になることを緩和するために、フレキシブルタイム内の始業、終業時刻については労働者の自主的な選択に委ねることとしつつ、労使協定において労働時間管理の面から目安としてフレキシブルタイムを30分等の単位に区切り、その時刻を目標として始業、終業を行うようにすることと定めることは許されると解されます。

 

 

【法律】

 

1.就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることを明定すること

 

2.労使協定により、以下の事項を定めること

 

①対象労働者の範囲

②清算期間

・清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えないこと

・清算期間は1箇月以内の期間に限るものとし、起算日を定める

③清算期間における総労働時間

時間外労働の算定:総労働時間の総枠を超えた部分(平成11.3.31基発168号)

④標準となる1日の労働時間

・年次有給休暇取得時の算定の基礎とする

⑤コアタイムとフレキシブルタイムを定める場合(任意)

・コアタイムを定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻

・フレキシブルタイムを設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻

 

3.労使協定の有効期間の取扱いについて(平成6.3.31基発181号)

 

①有効期間の定めは任意である。

②有効期間を定めた場合は、自動更新とすることは差し支えない。

 

4.所轄労働基準監督署への届出は不要である

 

 

【留意点】

 

1.フレックスタイム制を採用する場合に、コアタイムとフレキシブルタイムを設ける場合には、その旨就業規則に規定しておく必要がある。なお、フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則等により、始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねることを定める必要があり、始業時刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねる旨の定めでは足りない。また、フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合については、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたことにはならない(法32条の3、法89条1号、昭和

63.1.1基発1号、平成11.3.31基発168号)

 

2.休憩時間を一斉に与える必要がない事業場でフレックスタイム制を採用する場合に、休憩時間をとる時間帯を労働者にゆだねようとするときには、就業規則において、各日の休憩時間の長さを定めるとともに、それをとる時間帯は労働者にゆだねる旨の規定をおけばよく、これらのことをフレックスタイム制に係る労使協定の中に定めておくことは必ずしも必要ない(法32条の3、昭和63.3.14基発150号)

 

3.フレックスタイム制を採用している事業場であっても、使用者は各労働者の各日の労働時間を把握しておく必要がある(法32条の3、昭和63.3.14基発150号)

 

4.フレックスタイム制を採用した場合に、法定時間外労働が発生する場合、同法第36条第1項に規定する協定(36協定)を締結する必要があるが、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りる(法32条の3、昭和63.1.1基発1号、平成11.3.31基発168号)

 

5.清算期間の総労働時間として定められた時間分の賃金はその期間の賃金支払日に支払われるが、清算期間の総労働時間を超えて労働した時間分を次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、その清算期間内における労働の対価の一部がその期間の賃金支払日に支払われないことになり、労働基準法第24条(賃金の全額払い)に違反し、許されないものである。

 

6.派遣労働者を派遣先においてフレックスタイム制の下で労働させる場合には、派遣元の使用者は、次のことを行う必要がある。

 

①派遣元事業場の就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を派遣労働者の決定にゆだねることを定めること

②派遣元事業場において労使協定を締結し、所要の事項について協定すること

③労働者派遣契約において当該労働者をフレックスタイム制の下で労働させることを定めること