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各社テレワークセミナーを聴講した感想 2014/10/24

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執筆・寄稿・取材(宝島社・毎日新聞社・日本経済新聞社・小学館・Yahoo!ニュース)
著書『図解とQ&Aですっきりわかるマイナンバーのしくみ』(宝島社)=33,000部=トーハン調べ2015/11/4週間ベストセラー単行本ビジネス書6位
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講演
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政治家小池百合子顧問社労士
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内閣大臣補佐官~マイナンバー福田峰之代議士と親交
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国会議員の方々と(一部抜粋)
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個人情報保護規程(マイナンバー法・ストレスチェック網羅版)
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これまで参加してきた余多のワークライフバランス関係のセミナーについて総括すると、労働基準関係法令に触れるセミナーは皆無であることが残念でなりません。

 

セミナーの手順は、前半はテレワークの必要性について、政府等の統計を織り混ぜて説明したあと、自社の導入事例が述べられます。後半はクラウドの紹介とIT活用のデモ、又は助成金の紹介のパターンです。

 

内情はわかりませんが、彼らの説明を聞いていると、自社のテレワーク運用において、労働基準関係法令が遵守されているのだろうか?と誤解を生じかねない事例や提案が度々述べられます。

 

例えば、本日、内閣府からも呼ばれるある著名人のセミナーで、自社開発「さぼり監視システム」について「常時在宅勤務中の職員を監視し、退席と着席の時間管理と具体的な指示を出すことが可能な自社開発のシステムが某省庁に導入されている」との触れ込みでPRがありました。続けて、オンライン接続し、全社員のオンライン接続状況を表示したあと、従業員1人と実際に交信。勤怠監視システムも合わせて表示し「労働時間が不足している。(働いていない時間分は)お金払いたくない」と会場内の聴講者にPRしていました。

 

ここで注意が必要ですが、某省庁とは一般職の国家公務員です。彼らは労働基準法の適用除外ですので、労働基準法の適用を受ける民間企業とは別扱いです。

 

在宅勤務に関する管理方法については、労働時間と私生活が混在する労働者と、労働時間と私生活を厳密に分けて行える環境がつくれる労働者と、労働者の居住空間や家族構成によってまちまちです(いずれにしましても、在宅勤務を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬のないように、あらかじめ在宅勤務の方法等について、十分協議し、文書保存する等の手続きをすることが望ましいとされています)。

 

在宅勤務について、当該業務の遂行が、随時使用者の具体的な指示に基づくものであれば、みなし労働時間制やフレックスタイム制等のルール違反になります。使用者は、当該業務の遂行について、労働者の裁量に委ねなければなりません。 実際に当該システムの機能を利用して、随時労働者の行動を監視し、随時指示を出し、勤怠に関する評価基準に利用すれば、裁量労働には該当しない上、労働時間管理システムの実績に基づく給与しか支払わないのであれば、未払い賃金による違法行為です。

ただし、労働契約書に「パソコンを操作している時間のみ労働時間として取り扱い、実労働時間以外の賃金は支払わない」等を規定し、労使合意の元で業務が遂行されているならこの限りではありませんが、その場合は、聴講者にひとこと断りを入れるべきです(勤務していたときは、定時の賃金が支給されていたのに、在宅勤務に切り替えたら実労働時間分の賃金しか支給されなくなるとすれば、労働契約の不利益変更になるので、セミナー聴講者の企業の従業員が、当該不利益変更に係る労働契約に合意するか図りかねますが・・・ですから、ひとことの断りが必要なのです)。

例として【事業場外労働のみなし労働時間制】の条文を述べますが「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」と書かれています。

みなしを導入している場合、勤怠については、システム監視により不利益な取扱いをせず、労働者の裁量に委ね、賃金については、みなされた時間労働したものとして取扱い、仕上がった仕事が、その成果として報酬に反映されることが、労働基準法に定められた裁量労働の定義です。実労働時間以外の賃金は支払わないとする労働契約が提携されておらず、法律から逸脱し、使用者の利益(通勤費、光熱費、ワークスペース管理費、人件費等の削減)ばかりに叶うようなものであってはなりません。

 

今後、IT技術の進歩に合わせて労働基準法の解釈が変わるか?といえば、労働基準法はIT技術のために定められた法律ではなく、労働基準法第2条「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」を満たすものでなければなりません。

企業のもつ「在宅勤務では、労働者の管理や公平な評価が困難になる」とのマイナスイメージから、在宅勤務を可能とするグループウェアやクラウドサービス、Web会議その他モバイルの紹介やデモはとても重要ですが、法令をおざなりにすれば、のちのちテレワーク導入を検討する企業及び導入した企業から「考えていたことと違う」「労働者から労基署に通報された」とトラブルに繋がりかねません。

 

【参考資料】

厚生労働省労働基準局長から都道府県労働基準局長への通達「平成16.3.5基発0305001号」在宅勤務について

①当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われていること

②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと